2012年10月1日月曜日

広告の未来は「365日コネクション」(『ベロシティ思考』を読んで)

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ベロシティ思考-最高の成果を上げるためのクリエイティブ術-
アジャズ・アーメッド ステファン・オランダー レイ・イナモト(日本版特別寄稿)
パイインターナショナル (2012-08-08)
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■AKQA創設者とNIKE副社長による対談本 

最近よく考えること。
それは、「広告の未来」。 

5年後、10年後、
僕たちの“広告”という仕事は
どうなっているのでしょうか。

それを、真剣に考えておかないと、
今ここで取り残されてしまうんじゃ
ないかという危機感を感じています。

そんな中、良い本に出会いました。  

 ベロシティ思考 
 最高の成果を上げるための 
 クリエイティブ術 

AKQAの創設者アジャズ・アーメッド氏と
NIKEのデジタルスポーツ担当副社長
ステファン・オーランダー氏による対談本です。 

AKQAのレイ・イナモトさんが
特別寄稿をしていると知って、
即購入しました。 

広告の話だけでなく、
組織や働き方など幅広いテーマについて
語られていて、要所要所には、
とても教訓となる言葉がちりばめられており
いろいろと考えることができる一冊だと思います。


■広告の未来とジレンマ 

特に自分が共感した言葉を紹介します。

The goal is to
create connections
with our customers
and earn their loyalty
by serving them.

ゴールは、お客様とのつながりを
つくることであり、
役に立つことによって
顧客ロイヤルティを獲得することだ。 

この言葉は、
声に出して何度も読み返しました。
なぜなら、“広告の未来”は、 
この言葉に集約されているような
気がするからです。 

一方的に何らかのメッセージを伝えるという
“従来の広告”の概念から考えると
かなり異質なものに思えるし、
依然としてマスメディアに“広告”を
載っけてそのマージンをもらうことが
収益の柱となっている日本の“広告ビジネス”においては、
「そんなんじゃ金にならないよ」というのも
もっともかもしれませんが、
でも、これこそが、“広告の未来”である
ように思えてならないのです。

そう思う理由はいくつかありますが、
大きくは、以下の3つです。 

①世の中に情報が溢れ、 
 メッセージが伝わりにくくなった。 
②テクノロジーの進化により、 
 消費者と直接つながることが容易になった。 
③ソーシャルメディアの普及により、 
 ロイヤルカスタマーのクチコミ効果が増大した。 

①と②については、
この本でも触れられていますし、
③も否定しようのない事実である以上、
“広告の未来”は、おのずと、
見えてくるのではないでしょうか。 

ただ、問題なのは、
日本の広告ビジネスモデルが
それに追いついていないということ。 

クライアントにとってベストなことが
広告会社にとって最も収益になることではない、
というジレンマ。 

プロモーションとデジタルの部署を経て
ちょうど1年前に営業職に移った自分にとっては、
このジレンマは非常に大きなものです。


■「360」ではなく「365」  

極めつけは、レイ・イナモトさんの特別寄稿です。 

結論から言おう。
「広告の未来は“広告”ではない」。
そう僕は確信している。
(中略)
未来とは:
 「マス広告」ではなく「ソフトウェア」
 「メディア」ではなく「プロダクト」
 「ブランドの物語」ではなく「ブランドの行動」
 「キャンペーン」ではなく「プログラム」
 「360」ではなく「365」

この中でも、特に心に響いたのは、
「360」ではなく「365」という話です。 

20世紀が「360度のコミュニケーション」
の時代だとしたら、今後21世紀は
「365日のコネクション」の時代だ。 

僕が今の会社に入社した2006年当時、
会社が標榜していた言葉が、
まさに「360°コミュニケーション」でした。 

あれから6年半。
まさかその概念がこれほどまでに
古ぼけて感じられるとは、
思いもしませんでした。 

いかにタッチポイントを増やすかではなく、
いかに長期的にユーザーとコネクトできるか。

TVでもWEBでも屋外でも見てもらえる、
ということよりも、
今日も明日も明後日もつながっていてもらえる、
ということの方が重要なのだと感じます。 

具体的な事例を知りたければ、
この本の中で、
ナイキやハイネケン、フィアットなどの
事例が紹介されていますので、
是非読んでみて下さい。 

また、この本とは関係ないですが、
スケダチの高広さんの本で紹介されている
「花王ヘルシア 12週間健康チャレンジ」も
この考え方に近い気がします。 


たぶん、これからの課題は、
こういった考え方を、
いかに広告主に理解してもらうかと、
いかにそれを広告会社として
収益化できるビジネスモデルにしていくか
ではないでしょうか。


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2012年9月22日土曜日

脳内会話が起きる4パターン(『そそるマーケティング』を読んで)

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そそるマーケティング
そそるマーケティング
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電通感性工学ユニット
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今回読んだこの本は、
電通の「感性工学ユニット」という
プロジェクトチームによる本です。

生活者の購買行動における
「なんとなく…」という“感性”の部分を
「感性工学」という視点から研究し、
人の頭の中で起こる「脳内会話」を
モデル化しようという試みです。 

正直、読んだ感想としては、
「今後に期待したい」という
感じではありますが、
その試み自体は、非常に、
価値あるものだと思います。 

簡単に紹介すると、この本では、
「五感を通じてインプットされる情報」
のことを「ニュース」と呼び、
「そのニュースによって呼び起される
 脳内の記憶やイメージ」のことを
「ストック」と呼んでいます。 

そして、
・ストックが「構造化されたもの」か「断片的なもの」か
・ニュースがストックに対して、
 「同質なもの」か「異質なもの」か
という2軸でマトリックスを組み、
脳内会話がうまく作動するパターンを整理しています。 

言葉を変えて、もの凄くざっくり言うと、
人がそのブランドや商品に対して
・「良く知っている」のか「あまり知らない」のか 
・そのイメージは「好意的」か「好意的ではない」か 
によって、その人に与えるべき情報を
以下の4つのうちどのような情報にすべきか
考えることができる、ということです。

①知識・イメージを強化する情報を与える(なるほど会話) 
②知識・イメージを整理させる情報を与える(磁石会話) 
③知識・イメージを覆す情報を与える(ギャップ会話) 
④知識・イメージを修正する情報を与える(書き換え会話) 

「そりゃそうだよな」という感じもあるかもしれませんが、
我々がターゲットに対して、
どういったメッセージを伝えるのかを考える時、
ターゲットの「ストック(ブランドに対する知識・イメージ)」が
どういう状態なのかということを正確に把握することは、
非常に意味あることだと思います。 

こういったことって、案外、
意識しないと考えることを忘れてしまっている
ことがあるような気もします。 

結局「インサイト」とかっていう
“便利な”言葉で片付けられてしまうところを
改めてわかりやすく定義しようという試み自体は
おもしろいなぁと思いました。


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2012年9月8日土曜日

広告業界に起きる3つのワーク・シフト

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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
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■未来の「働き方」に起きる3つの変化 

前から気になっていたこの本、
「ワーク・シフト」。
2025年に、私たちの働き方は、
どう変化(=シフト)しているのか。
その大きなヒントの数々が
この本の中に盛り込まれていて、
なかなか読みごたえのある一冊でした。

著者は、3つの大きな変化が起きると
主張しています。

<第一のシフト>
ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

<第二のシフト>
孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ

<第三のシフト>
大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

根拠や細かい説明は省きますが、
第一のシフトは、つまり、
広く浅い知識をもつのではなく、
いくつかの専門技能を連続的に習得して
いかなければならなくなるということ。

第二のシフトは、
他の人たちとの「つながり」がより重要になり、
その人的ネットワークを活かしながら、
協力してイノベーションを起こすことが
必要になるということ。

第三のシフトは、
何を消費・所有するかより、
情熱をもって「何を生み出すか」
より重要になるということです。


■2025年の広告業界で求められる人材 

では、この3つのシフトを、
広告業界に当てはめて考えてみたいと思います。

<第一のシフト>
ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

将来、技術革新やグローバル化がさらに進み、
人材の競争が激化していけば、
「ゼネラリスト」は非常に苦しくなるわけですが、
広告会社の中で「ゼネラリスト」といえば、
恐らく「営業職」ではないでしょうか。

広告代理店の営業職が今後厳しくなるという話は、
『僕は君たちに武器を配りたい』
という本の中でも触れられています。

いろいろな価値観や考え方があるので、
一概には言えませんが、
個人的には、一度は営業を経験することは
非常にプラスになると思いつつも、
営業一筋で、「ゼネラリスト」として
広くて浅い知識しかもって場合は、
確かに、将来苦しくなる気がします。

かといって、
ある特定分野のスペシャリストでは、
特に変化の激しい広告業界においては、
非常にリスクが高いと言えます。

特定分野のスペシャリストが苦しくなるというのは、
この本でも、前述の『僕は君たちに武器を配りたい』でも
同じように述べられています。

そこで、この本が推奨しているが
「専門技能の連続的習得(連続スペシャリスト)」です。

まず、自分が選んだ専門分野の
技能と知識を深める必要がある。
そしてその後も、自分の能力を高めたり、
新しい人的ネットワークを築いたりすることを通じて、
ほかの専門分野に移動したり、
脱皮したりすることを繰り返さなくてはならない。

では、どのような専門分野が
高い価値をもつのか。
この本によれば、
以下の3つの条件を満たすことが重要です。

①その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること。
②その技能の持ち主が少なく、技能に対する需要が供給を上回っていること。
③その技能がほかの人に模倣されにくく、機械によっても代用されにくいこと。


■2025年の広告業界の人的ネットワーク 

<第二のシフト>
孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ

人との「つながり」や「コラボレーション」
が今後ますます重要になってくると、
今の広告会社にありがちな縦割り組織では
立ちいかなくなってくるかもしれません。

クリエイティブとマーケティング、
デジタルとマスメディアなど、
正直、まだまだ組織間の壁が
少なからず残っている気がします。

自分とは異なる専門技能をもった人たちと
有機的に、フレキシブルな
人的ネットワークを築いていく必要があります。

当然それは、
一つの企業の中で完結する話ではなく、
企業や業界を超えたものになるでしょう。

ソーシャルメディアなどの技術革新により、
そういった人と人との結びつきが
もっと容易に形成される世の中になれば、
もはや、どの企業に属しているかは
あまり問題ではなくなるかもしれません。

ちなみに、この本では、
将来重要になる人的ネットワークについて、
次のように書かれています。

関心分野を共有する少人数の
ブレーン集団である「ポッセ」、
多様なアイデアの源となる
「ビッグアイデア・クラウド」、
そして、安らぎと活力を与えてくれる
現実世界の友人などで構成される
「自己再生のコミュニティ」を築くために、
意識的に努力しなくてはならない。


■2025年の広告業界のやりがい 

<第三のシフト>
大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

もともと、広告業界は、
どちらかと言うと派手な業界で、
多少偏見的な見方をすると、
大きな売上を上げて、
高い給料をもらい、派手に遊び、
高い車やマンションを所有することが、
ひとつの「やりがい」になっていた
ような気がします。

しかし、今後は、
そういった価値観に変化が
生まれてくると思います。

「いかに大きな売上を上げるか」とか
「いかにたくさんの給料をもらうか」より、
「自分が何を生み出しているか」
「やりがい」に感じる人が増えてくるのではないか、
というのがこの本の主張です。

私は、現在ぎりぎり20代なので、
いわゆる「Y世代」ということになりますが、
40代、50代の上司と話をするときと、
同世代の人間と話をするときでは、
「何にやりがいを感じるか」などの
価値観については、大きなギャップを感じます。

どっちが良いとか悪いとかではなく、
必然的な世代交代の結果として、
この本にも書かれている通り、将来、
「Y世代の影響力が拡大」します。

Y世代が自分たちの希望やニーズを職場に
反映させるようになる。
ワークライフバランスを重んじ、
仕事に面白さを求めるY世代の志向が
仕事のあり方や組織のあり方、
仕事の環境を大きく変えていくだろう。

そうなった時、
あなたは何のために働くのか。
無限に多様化する働き方の選択肢の中で、
あなたはどういった働き方を選択するのか。
そういったことを
自ら積極的に考えなければならない
時代になるのだと思います。


■主体的に築く未来 

この本の中では、
2025年がどういう世の中になるのかについて、
明るい未来のストーリーと
暗い未来のストーリーの
両方のパターンで、具体的に描いています。

2025年、私たちはどんなふうに
働いているだろうか?
「漫然と迎える未来」には
孤独で貧困な人生が待ちうけ、
「主体的に築く未来」には
自由で創造的な人生がある。

未来を主体的に築くために、
この本は、一読の価値があると思います。

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2012年8月26日日曜日

ヒットを生んだ企業が注目した“ハッスル”とは?(『ザ・ディマンド』を読んで)

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ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術
エイドリアン・J・スライウォツキー カール・ウェバー
日本経済新聞出版社
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■「ドラッカーの再来」が書いた本 

この本は、「ドラッカーの再来」とも称される
エイドリアン・J・スライウォツキー氏が
「爆発的ヒットを生む需要創出術」について
書いた本です。

成功している世界の様々な製品・サービスについて、
それがいかにして人々の需要を創出してきたのか、
ストーリー感のある豊富な事例とともに書かれており、
「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」が好きな人なら、
非常に楽しめる一冊だと思います。

まず、この本では、
ディマンド(需要)を創出する上で必要なスキルとして、
以下6つのキーワードを掲げています。

①マグネティック ― 機能面と情緒面の「魅力」が需要を生み出す
②ハッスル・マップ ― 時間とお金をムダにする「欠点」を明らかにする
③バックストーリー ― 「見えない要素」で魅力を強化する
④トリガー ― 人々を「夢中」にさせ、購買の決断を下してもらう
⑤トラジェクトリー ― 魅力を「進化」させ、新しい需要層を掘り起こす
⑥バリエーション ― 「コスト効率の高い製品多様化」を図る

読む人によって、
これらのどの部分に強い関心を示すかは
まちまちだと思いますが、
私が特に注目したのは、
「ハッスル・マップ(Hassle Map)」というワードです。


■「ハッスル」を明らかにする 

「Hassle」という単語は、
日本の英和辞典だと「けんか、口論」などと
訳されていることが多いですが、
英英辞書で意味を見てみると、
「面倒、煩わしさ、不快」という言葉がしっくりきます。

そして、この本が言う「ハッスル」とは、
「顧客体験のなかに隠れている失望感、不便さ、
複雑さ、潜在的な厄介事の数々」のことで、
ハッスル・マップとは、
「それがどこに隠れているのかを示したもの」
といったような意味です。

著者はこう述べています。

ハッスル・マップは
頭の中にしまっておいてもいいし、
顧客のハッスルを実際に地図のように
書き出してもかまわない。
ディマンド創出をきわめたいなら、
役に立ちたいと思う顧客のハッスル・マップを
作成することがなにより有益だ。

この本を読むと、
成功している企業の多くは、
このハッスル・マップを明らかにすることに
相当な時間と労力を注ぎ込んでいることがわかります。

顧客の「ハッスル」を見つけ出すためには、
徹底した顧客との対話が不可欠です。
さらに、ハッスルは、
潜在レベルのものまでも浮き彫りにすることが重要で、
そのためには、顧客と心から向き合い、
顧客目線で物事を見つめる必要があるでしょう。

本書に登場する「ディマンド・クリエイター」の一人、
ネスレのヘンク・クワクマンは、
次のような発言をしています。

「問題が見つかるということは、
ビジネスが見つかるということだ」

ここで言う「問題」とは、
もちろん「ハッスル」のことです。


■「ハッスル」から「トリガー」へ 

ハッスルを理解することで何が起こるのかと言うと、
それは、もう一つのキーワードでもある
「トリガー」を見つけ出すことにつながるのです。

トリガーとは、
「様子見の人を顧客に転じさせるなにか」

コンセプトは共感されながらも、
なかなか普及しなかった「カーシェアリング」を
一気に広めたアメリカのジップカーにとって、
トリガーとなったのは、
「密度(家の近くにすぐ乗れる車があること)」でした。

ソニーが失敗したアメリカの電子書籍市場で、
キンドルを成功に導いたトリガーは、
「書籍への瞬間的なアクセス」でした。

ネットフリックス(TSUTAYA DISCASのようなもの)の
ディマンドを一気に加熱させたトリガーは、
「配達速度」でした。

この本を読めばよくわかりますが、いずれも、
顧客のハッスルを全力で理解しようとした結果、
見つけ出すことができた「トリガー」なのです。


製品やサービスを提供する企業、
あるいは、私たち広告会社の人間にとっては、
「顧客のニーズを理解する」という考え方のほうが
一般的だと思います。

しかし、この本で紹介されている
「顧客のハッスルを明らかにする」
→「トリガーを見つけ出す」
→「ディマンドを創出する」
という考え方も、ぜひ日頃から、
意識しておきたいことの一つだと感じました。


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2012年7月22日日曜日

商品をサービス化するという発想(『次世代コミュニケーションプランニング』を読んで)

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次世代コミュニケーションプランニング
高広 伯彦
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遅れ馳せながら、高広伯彦さんの
「次世代コミュニケーションプランニング」
を読みました。

アマゾンのレビューの中に、
この本のことを、
「コミュニケーションプランニング(再)入門」、
あるいは、「高広伯彦入門」と
表現している人がいましたが、
なかなかしっくりくる表現だと思います。

高広さんのことを、
ブログやTwitterでフォローし、
セミナーやアドタイの連載も
チェックしている自分としては、
期待が大きすぎるせいかやや物足りない感もあり、
5章の「コンテクストプランニング」については
もっと深く読んでみたいと感じました。

とはいえ、読み終えると、
やはりドッグイヤーだらけでした。

そんな中でも特に心に響いたのは
次の一文です。

ソーシャルメディアの時代には、
ユーザーを囲い込むのではなく、
ユーザー自身が作っている
コミュニティに入っていき、
いかに企業側がユーザーに
「囲い込まれる」かが鍵になってくる。

これはすごく納得で、
最近の優れたコミュニケーション事例を見ると、
「囲い込まれる」という表現が
非常に的を射ているように感じます。

また、この本の中では、
著者が実際に携わった事例が
多く紹介されていますが、
その中でも、個人的に一番のお気に入りは、
「花王ヘルシア 12週間健康チャレンジ」です。

この企画については、
キャンペーンが始まった当初から、
あまり派手さはないけど、
コミュニケーションプランニングという意味では、
飛びぬけて秀逸だなぁと思っていました。

その企画が生まれる上で
ベースとなった考え方が
この本の中で紹介されています。

買い手側が期待する「価値」に対して、
「商品」はそれを満たしているか、
満たしていないならば
アドオンする必要があるかと考えてみる。
(中略)
この「期待される価値」の足りない部分を
補うというのが「商品のサービス化」という発想であり、
これを具現化するものとして「メディア作り」がある。

一見するとこの事例は、
単にソーシャルメディアの活用事例と
捉えられるかもしれませんが、
その根底にあったのは、
「商品をサービス化する」という発想です。

ヘルシアの場合、
「期待される価値」とは、
「脂肪の燃焼=肥満の解消」ですが、
「商品」だけでそれを完全に満たすことはできません。
そこで、体重、体脂肪や運動の記録を付けたり、
友達とその状況をシェアすることができる
「サービス」を作り出したのです。

そうすることで、ユーザーに
うまく「囲い込まれる」ことに
成功しています。

この考え方は、
他にもいろいろと
応用が可能な考え方ではないでしょうか。

広告(コミュニケーション)の力で
「商品をサービス化する」というのは
比較的新しい発想だと思いますし、
今後広告会社に期待される
大きな役割の一つになるかもしれません。

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