2011年10月30日日曜日

20代の広告マンはこれからどう歩むべきか(『僕は君たちに武器を配りたい』を読んで)

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僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史
講談社
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5年後、10年後が非常に不透明な広告業界において
自分はどう歩んでいくべきか、
そんなことを考えることがよくあります。

そんな中、
この『僕は君たちに武器を配りたい』という本を見つけ、
何かヒントがありそうな気がしたので読んでみました。


まず最初に共感したのが、
「人材のコモディティ化が進む」という話。
商品がコモディティ化すれば、
その商品は価格競争に陥ります。
このことは、人材のコモディティ化においても同じで、
コモディティとなった人材は、価格競争、
つまり、給料が安い方が求められる
という事態に陥るということです。

このことは実体験からも頷けます。
私はつい先月までWeb関連の部署にいましたが、
例えば、「Webメディアの枠を売る」という業務、
これは完全にコモディティ化しています。

バナーやサイトの制作から効果検証まで
一手に請け負えればまだいいですが、
単純に枠を買うだけなら、
一番安いところから買った方がいい
ということになってしまいます。

実際にそのことを如実に物語るような
「入札コンペ」も増えてきています。

そうなって来ると、
純粋に値引き合戦になるわけですが、
枠そのものの価格は基本的に決まっているので、
値引きをしていくためには、
社員の給料を安く抑える必要がでてきます。

これは一例ですが、
重要なのは「人材のコモディティ化が進んでいる」
という事実です。


では、コモディティ化しない人材とは
どんな人材なのでしょうか。

この本によれば、
以下の6つのタイプに分類できるそうです。

①商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
②自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
③商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
④まったく新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
⑤自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
⑥投資家として市場に参加している人(インベスター=投資家)

ただし、
①トレーダーと②エキスパートに関しては、
「今後生き残っていくのが難しくなるだろう」
と指摘されています。


この本の中では、
今後厳しくなっていく「トレーダー的」な仕事として、
まさに広告代理店の営業職が紹介されています。

これだけを書くと異論反論あると思いますが、
クライアントの接待をしてメディアの枠を
売り買いするだけの営業であれば、
「厳しくなる」というのは否めないかもしれません。

営業といえども、「トレーダー」としてだけでなく、
③~⑥のような資質も求められるのだと思います。


なぜ「エキスパート」も厳しくなるのか?
それについてはこう書かれています。

産業構造の変化があまりにも激しいため、
せっかく積み重ねてきたスキルや知識自体が、
あっという間に過去のものとなり、
必要性がなくなってしまうのである。

確かに、広告業界においても、
この10年間の劇的な変化を考えれば、
大いに頷ける部分があります。

エキスパートになること自体は悪くはないと思いますが、
その専門性が本当に10年後、20年後も必要とされるものなのか、
特に20代の広告マンは、その辺りのことも、
冷静に、そして真剣に、考えた方がいいかもしれません。

10年前、20年前の広告業界において重宝されていた専門性と
今現在重宝されている専門性が明らかに異なることを考えると、
エキスパートを目指すことは、
非常にリスクが高いことのように感じます。

では、広告会社において、
10年後も20年後も必要とされる人材とは?
それは、この本にも書かれている通り、
マーケターであり、イノベーターだと思います。

イノベーションとは何か?

既存のものを、
今までとは違う組み合わせ方で提示すること。
それがイノベーションの本質だ。

この本にはそう書かれています。

これは、「アイデアのつくり方」という本に書かれてある、
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
という考え方と合致します。

つまり、イノベーターとは、
アイデアを生み出す能力がある人、
だと言えます。

個人的な結論ですが、
20代の広告マンが今後必要とされる能力は、
「マーケティングの能力」と「アイデアを生み出す能力」
だと思います。

私はこれまで、イベントの部署、Web関連の部署を経験し、
今は営業の部署にいますが、
どの部署にいても、やはり、
マーケティング能力の必要性を強く感じます。
たぶんそれは、クリエイティブにいても、
メディアの部署にいても同じことだと思います。

マーケティングの専門部署にいることが
一番いいかどうかはわかりませんが、
どの部署にいてもマーケティングの能力が、
今後ますます求められることは間違いないと思います。

自分自身、20代(ぎりぎり)の広告マンとして、
今後どう歩んでいくか迷う部分もありますが、
今のところ、それが一つの解だったりします。

ちなみに、この本の一番の面白さは、
⑥の「投資家」の部分にあると思います。
これは、今いる会社でどう働くかというよりも、
これからの人生を、この資本主義の世界で、
どう生き抜いていくかとう話に近いかもしれません。

この本の「投資家として生きる」というのは、
単に株式投資をするということではなく、
自分自身を「投資」するということです。

改めて、
「資本主義ってそういうことだよね。。」
って実感します。

若いうちに読んでおいて損はない一冊だと思います。

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