2012年6月24日日曜日

広告で示すべきハピネスの形とは?(『つなげる広告』を読んで)

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
つなげる広告 共感、ソーシャル、ゲームで築く顧客との新しい関係性 (アスキー新書)
京井良彦
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 3795


ロングエンゲージメント」の著者で
電通のアカウントプランナー、
京井良彦さんの新刊「つなげる広告」
を読みました。

ご本人がプロローグで、
「主張も事例も新しいものではないかもしれません」
と書かれている通りではありますが、
ソーシャルメディアが
当たり前になりつつある現代の
新しい広告のあり方について、
重要なエッセンスがうまくまとまっている
本だと感じました。


まず、広告の役割について、
著者は次のように述べています。

広告は生活者のハピネスの形を明示し、
導いていかなければならない

そして、「確かに」と頷いたのが、
「物質的な豊かさ」=「幸せ」
だった成長期の日本と現代の日本では、
「幸せ」の定義が異なっており、
つまりは、広告が示すべき
「ハピネスの形」も変わってくる
ということです。

筆者が言っている
新しいハピネスの形とは、
「人とのつながり」
「コミュニティーへの貢献」
といった社会的な価値観です。

物質的な豊かさがある程度
当たり前のものになった現代において、
日本人が求める「ハピネスの形」は
非常に多様化しています。

そんな中、
ソーシャルメディアの普及によって、
「人とつながる」ことは、
容易になり、かつ可視化されるものになりました。
そう考えると、著者が言うような、
「人とのつながり」や
「コミュニティーへの貢献」といった
新しいハピネスの形が生まれてくるのは、
当然の流れだと思えます。

「なぜ人はつながりを求めるようになったのか」
について、僕の考えは、
著者の本の中での説明と少し異なり、
人とのつながりが「容易」になり、
かつ「可視化された」というのが
ポイントではないかと考えています。

レコーディングダイエットがいい例で、
人は対象が可視化されると
モチベーションを向上させやすくなります。

ソーシャルメディアによって
「人とのつながり」が可視化されたことで
より「人とつながりたい」という欲求が
増してきているのではないかと思います。

広告に携わる人間として、
ソーシャルメディアがもたらした変化
について考える時、これまでは、
「情報の流れの変化」ばかりに
注目していたような気がします。

しかし、この本を読んで、
ソーシャルメディアを起因とした、
人が求める「ハピネスの形の変化」にも
もっと注目し、議論されていかなければ
ならないような気がしてきました。

なぜなら、著者が言うように、
「広告は生活者のハピネスの形を明示し、
導いていかなければならない」
からです。

 RSSリーダーで購読する

2012年6月17日日曜日

戦略思考に必要な3つのスキル(『戦略シナリオ』を読んで)

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
戦略シナリオ 思考と技術 (Best solution)
斎藤 嘉則
東洋経済新報社
売り上げランキング: 18914


この本の主要なキーワードのひとつに、
「戦略思考」という言葉があります。

≪戦略思考≫とは一言でいうと、
「不確実なビジネス環境において、
明確な将来のシナリオを創る思考」
である。それは、
枠組みの変化や本質そのものの変化が
激しく押し寄せる現代において、
変化の流れ=潮流をすかさず読みとり、
どちらの方向に舵をとるべきかを
即断する思考方法ともいえる。

この本が書かれたのは1998年。
それから現在までに、
私たちを取り巻くビジネス環境は、
加速度的にその不確実性を増しており、
ビジネスパーソンにとって、
まさにこの「戦略思考」の必要性が
これまで以上に高まっていると言えます。

では、どのようにして、
この「戦略思考」を習得する
ことができるのか。

≪戦略思考≫を実現するには、
3つのスキルが必要とされる。
「具体的結論を出す力」、
「過去から将来まで構造を洞察する力」、
「リスクを伴う判断を行う力」である。

敢えて声を大にして言えば、
この3つのスキルを持ち合わせていない
人間が(自分も含めて)今の世の中には
多すぎるのではないでしょうか。

特に一つ目の、
「具体的結論を出す力」
結論を先延ばしにし、
結論を出すことを避ける人が
とても多いような気がします。

去年、「新入社員の後輩に伝えたい5つのこと
というエントリーにも書きましたが、
仮説ベースでもいいので、とにかく、
自分なりの解をもつ(=結論を出す)ことは、
極めて重要だと思います。

2つ目の「過去から将来まで構造を洞察する力」は、
「構造を」というのがポイント。
ただ、これは、なかなか難しい
スキルだと思います。それでも、
そういう意識を持つことが大切ではないでしょうか。

3つ目の「リスクを伴う判断を行う力」
無くてはならないスキルだと思います。

日本では、どうしても「リスク」というと、
非常にネガティブなものとして
捉えられがちです。

例えば、資産運用なんかを考えても、
日本ではリスクが極めて小さい銀行預金の
割合が圧倒的に多いのが実情です。
逆に、リスクを正しく理解せず、
「ギャンブル」としか言いようがないような
投資に走るのも大問題です。
「リスクを正しく理解した上でリスクを取る」
というのが、資産運用に限らず、
ビジネスにおいても重要だと思います。


もうひとつ、この本を読んで、
覚えておきたいと思ったことがあります。
それは、「3C+3S」というフレームワークです。

3Cは有名なので、説明するまでもないですが、
「Customer(顧客)」
「Competitor(競合)」
「Company(自社)」
の3Cです。

そして、3Sというのは、
「選択」「差別化」「集中」の3Sだそうです。
(「日本語かいっ」っていうツッコミはともかく。。)

Customer(顧客)はどういう人なのか、
どういうニーズを持っているのか
ということがわかった。しかし、
すべての顧客をターゲットとして
訴求することはできないので、
どの顧客ニーズを「選択」するのかを
決断しなければならない。また、
Competitor(競合)はどんな企業があって
どういう土俵で戦っているのか
ということがわかったら、
今度はその競合とどう「差別化」するのか
考えなければならない。そして、
Company(自社)を洞察することで
自社の資源や強みがわかったら、
どこに資源を「集中」するのかを
判断しなければならない。

よくありがちなのは、
分析は行ったのに具体的な決断が何も無いとか、
あるいは、ちゃんと分析をすることなく
根拠のない決断をしてしまうというもの。

そんな中、この「3C+3S」という、
分析から具体的な決断までがセットになった
考え方は、常日頃から、
意識したいと思いました。

 RSSリーダーで購読する

2012年6月3日日曜日

事業を成功させるポイント(『はじめの一歩を踏み出そう』を読んで)

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
マイケル・E. ガーバー
世界文化社
売り上げランキング: 582


この本は、副題の「成功する人たちの起業術」が
表している通り、スモールビジネスの
起業・経営ノウハウを、2,500社以上の
コンサルティング経験をもつ著者がまとめた本です。

アメリカのビジネス誌が行った
成長企業のCEO500人へのアンケートで、
ビジネス書No.1に選ばれた本だそうです。


この本の中で、
事業を成功させるためのポイントとして
強調されていることのひとつは、
「どうやって他人に任せても、
うまくいくような仕組みをつくるのか?」
ということです。

他人に任せることができないかぎり、
あなたは自分が始めた事業の
奴隷になってしまうからです。
逆にいえば、これを解決するような
アイデアさえ思いつけば、
あなたにも自由と成功への道が開けることになる。

これは、「起業家」に限らず、
広告会社を含めて一般の企業で働く人にとっても
通じる部分があると思います。

組織の中で、後輩など、
自分がある程度仕事を任せれる人ができると、
自分がいかに成果を上げるかと同じくらいに
誰がやっても同じように成果が上げられる
仕組みをいかに作るかが重要になってきます。

マクドナルドの創業者レイ・クロックに関する
以下の洞察も非常に納得できます。

レイ・クロックは、
「何を売るか」ではなく、
「どのように売るか」に着目した。
つまり、売るための仕組みにこそ
価値があると考えたのである。
マクドナルド兄弟の店でレイ・クロックが
理解したことは、ハンバーガーが
彼らの商品ではないということだった。
マクドナルドという店自体が彼らの商品だった。


もうひとつ、事業の成功ポイントとして
印象に残ったのは、「組織図を作る」
ということです。

単に「図」をつくることや、
ちょっとかっこいい組織名を考えることが
重要なのではなくて、
役割と責任を明確にすることが大切なのです。

著者は「役職契約書」を作成することを勧めています。

役職契約書とは、
会社と従業員との間の契約書類であり、
組織の一員としての責任を
明らかにするものである。
つまり、役職契約書とは、
だれが担当者で、誰が責任を負うのかを
明記した文書だと考えればよい。

役割と責任がそこまで明文化されたものは、
企業の規模に関わらず、あまりないかもしれません。
しかし、それを明確にすることのメリットは
想像以上に大きいと思います。

「あれ、これって誰がやるんだっけ?」
「こういう仕事はどの部署にお願いしたらいいの?」
「この部署とあの部署って何が違うの?」
どっかでよく聞くような話ですが、
こういう責任の所在が不明確な組織では、
事業が上手くいくわけないですよね。


この本を読んで最後に思ったことは、
別に起業するとかしないではなく、
自分は「仕組み」や「組織」を作る人間になるのか、
それとも、誰かが作った「仕組み」や「組織」の中で
働く人間になるのか、ということ。

それは、著者の次の言葉にも重なります。

普通の人と功績を残す人の違いは、
人生を受け身の姿勢で過ごすことと、
自ら人生を切り開こうとすることの差だと
私は信じている。

受け身の人生は過ごしたくない、
そう思う、今日この頃です。

 RSSリーダーで購読する