2011年9月11日日曜日

プレゼンでコントラストの原理を活用する方法 (『影響力の武器』を読んで)

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クライアントに企画などを提案する時に、
A案~C案というような形で、
複数の企画を提案することはよくあります。

そんな時は、
「一番売りたい(お勧めな)ものをA案に」
という「鉄則」を何の疑いもなく
信じてきましたが、
必ずしもそんなことはないな、
と思えてきました。

今読んでいる「影響力の武器」という本の中に、
「コントラストの原理」という言葉が出てきます。

簡単に言うと、
二番目に提示されるものが
最初に提示されるものと
かなり異なっている場合、
それが実際以上に最初のものと
異なっていると考えてしまう
傾向があるのです。

つまり、
予算が高い企画と安い企画がある場合、
最初に高い企画を出せば、
次の企画は「実際以上に」安く
感じられるということです。


そして、次のような説明があります。

セールスをやっている人にとっては、
高価な品を先に見せた方がずっと
多くの利益をあげられるようです。
そうしないと、
コントラストの原理の影響力を
利用できないばかりでなく、
その原理が自分たちに
不利に働いてしまう原因を
作ることになります。
安い商品を最初に見せて
次に高い商品を出すと、
それがいっそう高いものに
感じられてしまうからです。

このことを考えると、
高い案の方が売りたい場合でも、
安い案の方がお勧めの場合でも、
高い案をまず見せるのが良いと考えられます。


さらに興味深いのは、
ある不動産会社の人(フィル)の
セールステクニックについて書かれた
次の箇所です。

新しい客に住宅を見せるとき、フィルは
必ず魅力のない住宅から始めるのです。
このことを尋ねると、彼は笑いながら
次のように説明をしました。
これは、彼らが「セットアップ」物件と
呼んでいるものだったのです。
その会社は、リストのなかにボロ屋を
一つか二つ高い価格をつけて入れておきます。
これらの住宅は客に売るためではなく、
ただ見せるためだけにあります。
これらと比較すれば、
会社の商品目録のなかにある本当の住宅が
とても良いものに見えるからです。

「当て馬」的な考え方ですが、
本当に売りたい企画がある場合、
その案を最初に出すのではなく、
まず最初に「セットアップ案」を出し、
次に本当に売りたい企画を提案する、
というのも有効かもしれません。

とはいえ、
広告の仕事は不動産販売と違って、
クライアントと長期的な関係を
築いていく必要があるので、
「セットアップ案」を作るにしても、
クライアントの信用を損なわない
程度のものにする必要はあるかと思います。


このように、必ずしも、
「一番売りたい(お勧めな)ものをA案に」
する必要はないということなのですが、
それでも一番良い企画をA案にしないと
なんか気持ち悪い感じがするのは
私だけでしょうか。。

それによってあまりお勧めじゃなかった
安めのB案に決まってしまうことも
しばしばあるのですが。。


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2011年9月4日日曜日

What to sayを考える上での3つのチェックポイント (『課題解決!マーケティング・リサーチ入門』を読んで)

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もう少し、調査とか分析とか、
マーケティング的な部分も、
知識を深めていきたいと思い、
この本を読んでみました。

全て、ケーススタディをベースに、
リサーチの手法を解説されてあるので、
具体的にどういう課題がある時に、
どのような視点で、
どのような手法を使いながら、
分析、解決していけばよいのかが明確で、
とてもわかりやすい本だと思いました。

調査の手法はいろいろとありますが、
それはどれも「手段」でしかないので、
いかに「課題の本質が何なのか」を見極め、
自分の中で、「課題解決のステップ」を
的確に描けるかが重要だと感じます。

なので、ここでも、
調査手法を紹介するというよりは、
調査をする前段階の「考え方」の部分で、
一番印象に残った箇所を紹介したいと思います。


それは、
競争が激しい市場において、
どんなブランドイメージを強化していくべきか
ということを調査する上での、
非常に重要な考え方です。

ケビン・ケラーによれば、
ブランド・エクイティの
構築・競争優位のためには、
「強く」「好ましく」「ユニークな」
発想をブランドが有することが
重要であるとされています。

つまり、
そのブランドが持つイメージ(連想)を、
・「強い連想か(多くの人に再生される連想か)」
・「好ましい連想か(購入意向に結びつきやすい連想か)」
・「ユニークな連想か(競合に優位に差をつけている連想か)」
という3つの視点で、
分析していくということです。


この考え方は、
「強化すべきブランドイメージ」だけでなく、
広告・コミュニケーションで、
「What to say(何を生活者に伝えるべきか)」
を考える上でも重要な考え方だと思います。

よく、What to sayを考える際に、
確かに「強くて好ましい」ポイントなんだけど、
競合他社でもそれは言えることだったり、
確かに「ユニークで強い」ポイントなんだけど、
それは購入意向にあまりつながらないことだったり、
確かに「好ましくユニークな」ポイントなんだけど、
それはその商品では強く言えないポイントだったり、
ということが多々あります。

つまり、
What to sayを考える上で、
・それはその商品の特性をよく表しているか?
・それは購入意向につながるポイントか?
・それは競合より優位性のあるポイントか?
この3点を満たしているかどうかを考えることは、
非常に重要だと感じました。

当たり前と言えば当たり前ですが、
意外と忘れがちなので、
意識してチェックするようにしたいと思います。

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