2012年9月8日土曜日

広告業界に起きる3つのワーク・シフト

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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン
プレジデント社
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■未来の「働き方」に起きる3つの変化 

前から気になっていたこの本、
「ワーク・シフト」。
2025年に、私たちの働き方は、
どう変化(=シフト)しているのか。
その大きなヒントの数々が
この本の中に盛り込まれていて、
なかなか読みごたえのある一冊でした。

著者は、3つの大きな変化が起きると
主張しています。

<第一のシフト>
ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

<第二のシフト>
孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ

<第三のシフト>
大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

根拠や細かい説明は省きますが、
第一のシフトは、つまり、
広く浅い知識をもつのではなく、
いくつかの専門技能を連続的に習得して
いかなければならなくなるということ。

第二のシフトは、
他の人たちとの「つながり」がより重要になり、
その人的ネットワークを活かしながら、
協力してイノベーションを起こすことが
必要になるということ。

第三のシフトは、
何を消費・所有するかより、
情熱をもって「何を生み出すか」
より重要になるということです。


■2025年の広告業界で求められる人材 

では、この3つのシフトを、
広告業界に当てはめて考えてみたいと思います。

<第一のシフト>
ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ

将来、技術革新やグローバル化がさらに進み、
人材の競争が激化していけば、
「ゼネラリスト」は非常に苦しくなるわけですが、
広告会社の中で「ゼネラリスト」といえば、
恐らく「営業職」ではないでしょうか。

広告代理店の営業職が今後厳しくなるという話は、
『僕は君たちに武器を配りたい』
という本の中でも触れられています。

いろいろな価値観や考え方があるので、
一概には言えませんが、
個人的には、一度は営業を経験することは
非常にプラスになると思いつつも、
営業一筋で、「ゼネラリスト」として
広くて浅い知識しかもって場合は、
確かに、将来苦しくなる気がします。

かといって、
ある特定分野のスペシャリストでは、
特に変化の激しい広告業界においては、
非常にリスクが高いと言えます。

特定分野のスペシャリストが苦しくなるというのは、
この本でも、前述の『僕は君たちに武器を配りたい』でも
同じように述べられています。

そこで、この本が推奨しているが
「専門技能の連続的習得(連続スペシャリスト)」です。

まず、自分が選んだ専門分野の
技能と知識を深める必要がある。
そしてその後も、自分の能力を高めたり、
新しい人的ネットワークを築いたりすることを通じて、
ほかの専門分野に移動したり、
脱皮したりすることを繰り返さなくてはならない。

では、どのような専門分野が
高い価値をもつのか。
この本によれば、
以下の3つの条件を満たすことが重要です。

①その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること。
②その技能の持ち主が少なく、技能に対する需要が供給を上回っていること。
③その技能がほかの人に模倣されにくく、機械によっても代用されにくいこと。


■2025年の広告業界の人的ネットワーク 

<第二のシフト>
孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ

人との「つながり」や「コラボレーション」
が今後ますます重要になってくると、
今の広告会社にありがちな縦割り組織では
立ちいかなくなってくるかもしれません。

クリエイティブとマーケティング、
デジタルとマスメディアなど、
正直、まだまだ組織間の壁が
少なからず残っている気がします。

自分とは異なる専門技能をもった人たちと
有機的に、フレキシブルな
人的ネットワークを築いていく必要があります。

当然それは、
一つの企業の中で完結する話ではなく、
企業や業界を超えたものになるでしょう。

ソーシャルメディアなどの技術革新により、
そういった人と人との結びつきが
もっと容易に形成される世の中になれば、
もはや、どの企業に属しているかは
あまり問題ではなくなるかもしれません。

ちなみに、この本では、
将来重要になる人的ネットワークについて、
次のように書かれています。

関心分野を共有する少人数の
ブレーン集団である「ポッセ」、
多様なアイデアの源となる
「ビッグアイデア・クラウド」、
そして、安らぎと活力を与えてくれる
現実世界の友人などで構成される
「自己再生のコミュニティ」を築くために、
意識的に努力しなくてはならない。


■2025年の広告業界のやりがい 

<第三のシフト>
大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

もともと、広告業界は、
どちらかと言うと派手な業界で、
多少偏見的な見方をすると、
大きな売上を上げて、
高い給料をもらい、派手に遊び、
高い車やマンションを所有することが、
ひとつの「やりがい」になっていた
ような気がします。

しかし、今後は、
そういった価値観に変化が
生まれてくると思います。

「いかに大きな売上を上げるか」とか
「いかにたくさんの給料をもらうか」より、
「自分が何を生み出しているか」
「やりがい」に感じる人が増えてくるのではないか、
というのがこの本の主張です。

私は、現在ぎりぎり20代なので、
いわゆる「Y世代」ということになりますが、
40代、50代の上司と話をするときと、
同世代の人間と話をするときでは、
「何にやりがいを感じるか」などの
価値観については、大きなギャップを感じます。

どっちが良いとか悪いとかではなく、
必然的な世代交代の結果として、
この本にも書かれている通り、将来、
「Y世代の影響力が拡大」します。

Y世代が自分たちの希望やニーズを職場に
反映させるようになる。
ワークライフバランスを重んじ、
仕事に面白さを求めるY世代の志向が
仕事のあり方や組織のあり方、
仕事の環境を大きく変えていくだろう。

そうなった時、
あなたは何のために働くのか。
無限に多様化する働き方の選択肢の中で、
あなたはどういった働き方を選択するのか。
そういったことを
自ら積極的に考えなければならない
時代になるのだと思います。


■主体的に築く未来 

この本の中では、
2025年がどういう世の中になるのかについて、
明るい未来のストーリーと
暗い未来のストーリーの
両方のパターンで、具体的に描いています。

2025年、私たちはどんなふうに
働いているだろうか?
「漫然と迎える未来」には
孤独で貧困な人生が待ちうけ、
「主体的に築く未来」には
自由で創造的な人生がある。

未来を主体的に築くために、
この本は、一読の価値があると思います。

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